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大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

0s · QTnetモーニングビジネススクール · 21 Sep 01:00

今日は私が考える「私たちは、これからの未来をどう生き抜くか。」についてお話ししてみたいと思います。私のキーワードは、「自分らしさ」です。 リスナーの皆さんの「自分らしさ」って、何でしょうか?すぐに答えが出る方もいらっしゃると思いますが、「ちょっと待てよ。そんなこと急に言われても」と戸惑う方も少なくないのではないかと思います。この質問を企業に勤めるビジネスパーソンにお聞きすると、実は口ごもる人が少なくありません。なぜでしょうか。 実は、会社組織では「自分らしさ」を発揮することが求められていないからです。「自分らしさ」を発揮するのではなく、例えばマニュアルや規則に書いてあることをしっかり守ることが求められます。会社の期待通りに行動することが求められるわけです。その結果、職場では、「自分らしさ」を考えることや、ましてや「自分らしさ」を発揮する機会は本当に少なくなってしまいます。この意味で、組織というのは大変怖い側面を持っています。「朱に交われば赤くなる」というわけです。 皆さんが何か新しい企画を考える機会があったとしましょう。新しい企画なので、自由な発想で自分らしい企画を考えてよいかというと、必ずしもそうではありません。上司や周りの同僚が納得するような案を考えることが求められるからです。社内から異論・反論が起きないような答え、言ってみれば無難で、誰もが「確かにそうだよな」という企画案こそが、「良い」企画案とされてきました。そうした案を早く作ることができる人間が「できるヤツ」と言われてきました。そうした「良い案」を作らなければならないので、「自分らしさ」を考える暇などあるわけがありません。つまり会社には、「自分らしさ」を忘れさせる力が動いているといってもよいと思います。多くのビジネスパーソンが口ごもるのは、このようなわけがあるからです。 さて、今日なぜこの話をしているかというと、これからの時代は、これまでとは大きく状況が変わって、「自分らしさ」がとても大切になると思っているからです。 最近、新しいAIである、ChatGPTが大変話題になっています。皆さんの中にも使ったことがある方もいらっしゃると思います。ChatGPTは世界中の情報を集めて、論理的に分析した結果をわかりやすい日本語でアウトプットしてくれます。ChatGPTの強みを一言でいうと、誰もが納得する答えを出す力と言ってもよいと思います。そして、これからの時代は、誰もがこうしたAIの力を自由に使えるようになります。そうすると、これまで会社で求められてきた誰もが納得する企画案は、AIが作ってくれるようになるのです。  では、一体人間は何をすればよいのでしょうか。これを考えるためには、AIにはできないことを考えることが一番です。AIにはできないこととは何でしょうか?AIはなんでもできてしまいそうですが、実はAIは企画を作ったり、回答を出すことはできますが、それを実行したり、実現することはできません。   例えば、これからの外食産業を勝ち抜いていくためには、こういったカフェがよいだろう、という答えをAIは出すことはできますが、カフェを実際に作り上げていくのは誰でしょうか?それは人間です。そして、カフェを創るためには、多くの人がかかわってきます。デザイナーもいれば、食材の専門家もいる、スタッフの募集をしたりお金の計算をする人も必要です。みんな仕事の進め方も、ひょっとすると考え方自体も異なるかもしれません。そういった多様な人たちをまとめて、一つのカフェを創っていく。それは、実は簡単なことではないのです。 それではいったい何が必要なのでしょうか?それはリーダーシップです。考え方も、そして、ひょっとすると生き方も異なる人たちと一緒に、目指すものを作り上げていく力、これがリーダーシップです。具体的には何を目指していくのか、そしてそれは何故なのかを語っていくこと、この場合だと、どんなカフェを創りたいのか、そしてそれはなぜなのかを自分の言葉で語りかけ、多くの人たちのやる気のスイッチを押していくことが必要です。言葉をかえると共感を生み出す力と言ってもよいと思います。「そうか、この人がそういうのであれば、一肌脱いで頑張ってみるか。」を思わせることがとても重要になるのです。  よくリーダーシップというと、古くはキング牧師、最近ではスティーブ・ジョブスやイーロン・マスクのようなカリスマ性があって、かっこよくてパフォーマンスが上手な人を思い浮かべてしまうのですが、実はこうした人たちだけがリーダーシップの見本ではありません。例えば、インドを率いたガンジーや多くの弱き人たちを救ったマザーテレサなども素晴らしいリーダーです。雄弁でも何でもない、派手なパフォーマンスとは無縁の人です。彼・彼女がしたことは、自分が何を目指すのか、それはなぜなのか、そして自分はどんなことを大切にしていきたいのかを自分の言葉で多くの人に語り掛けたことです。それは、彼・彼女の「自分らしさ」そのもの、「自分らしさ」の本質といってもよいと思います。自分がどんなことを大切にし、自分が心から成し遂げたいと思うことは何か、それを自分の言葉で語ることを通じて、何千・何万という人の心に共感を生み出していったのです。 リーダーシップとは、「自分らしさ」を発揮することです。これは、AIにはできません。AIが作った文章を読んだことがある方はお気づきのとおり、AIの文章には感動がないのです。心が動かないのです。共感しないのです。これからの時代、我々人間にしかできないこと、すなわち多くの人に共感を生み出すために、是非「自分らしさ」を大事にして欲しいと思います。 今日のまとめ: これからの未来を生き抜いていくために大切なこと。それは、「自分らしさ」です。皆さんの「自分らしさ」を、今一度見つめなおす機会になれば嬉しいです。

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大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

いよいよモーニングビジネススクールも最終回です。このモーニングビジネススクールの放送の終わりとともに、私自身も来年3月で、九州大学を退職することになります。 そこで、実際に来年の春から本格的に取り組むことでもありますが、「人生100年時代の生き方と社会の活性化」という話をさせていただきます。 「人生100年時代の生き方と社会の活性化」というのは、高齢化が進む中でも社会は活性化していくということです。国連による2023年版の「世界幸福度報告書」によると、日本人の幸福度は世界で47位でした。これでも昨年の54位から7位上がっています。皆さんは、この結果をどう思われますか。低いと思われますか?確かにあまり自分が幸せだなと日々実感するわけではないですが、それにしても世界的に見て、こんなに低いのです。 もちろん統計の取り方や解釈にもよるとは思いますし、感じ方の違いもあるでしょう。ただ、人生100年時代で、私たちが90代までは当たり前に生きることになったとして、「まだまだ時間があるので、やりたいことができるのは楽しみ」とポジティブに考える人と、「長生きするのは良いけれど先々の生活が不安」と考える人と、どちらが多いと思いでしょうか?恐らく不安に感じる人も少なくないでしょう。何年か前に、年金だけでは老後に2千万円足りないという話もありました。実際に日本の9割の企業や組織では、退職年齢は60歳です。そうなると年金が支給される65歳まででさえ、仕事を探して、その間を繋ぐ必要があります。 そして、人生100年と考えると、60歳や65歳の年齢でも、まだ3分の1が残っているということになります。そこに不安を感じると、幸福度が低いのは当然ではないでしょうか。 一方で、少子高齢化で、日本の人口全体だけではなく、生産人口が大幅に減少することになります。そのために社会的な負担が増し、日本の国力も落ちることが心配されています。多くの人たちが退職する中で、人手が足りなくなるという現象です。そうであれば、退職するシニアの能力活用によって、個人の不安と社会の課題の両方の解消に向けて、大きく転換させられないかということになります。 2018年11月号のハーバード・ビジネスレビューに、「シニア世代を競争優位の源泉に変える」という論文がありました。高齢者を一括りにして、組織や社会に負担という先入観を捨てると、シニアの持つ豊富な知識や経験、調整能力は、組織の優位性にも繋がるという、とても心強い論文でした。但し、シニアが働きやすい勤務体制や環境を整えることが、前提になるということです。もちろん現役時代と同じ体力や持久力を期待するわけにはいきませんが、様々な形でその能力を活かすことはできるのではないかということです。労働力としての人材不足の解消だけではなく、適切な仕組みを作ることで、シニアの能力を前向きに活かすことができるということです。 『Life Shift 100年時代の人生戦略』の著者のリンダ・グラットンさんらも書かれていたことですが、今までの生き方が、「教育と就労と引退後」の3つの段階で構成されていたとすれば、これからのモデルは、マルチ・ステージ、複数の段階になっていくとのことです。現在の60歳や65歳は、昔に比べればはるかに健康なのではないでしょうか。そのように考えれば、まだまだ次、またその次と活躍できる場はあるとも言えます。いまその実現に向けて、いろいろと企画をしています。意識転換の研修、仕事の創造、働く枠組みづくり、地域活動の開拓など、5つくらいの内容です。単に就労を支援するのではなく、研修・仕事づくり・枠組みづくり・地域活動を行います。まだ試行錯誤の部分も多いのですが、このような多様なアプローチが必要と感じています。例えば、シニアが働くには、企業も本人の意識も変わる・変える必要がありますので、研修がとても重要だと思います。もちろん今まで培った知見が重要なのは間違いありませんが、今までの仕事や役職とは一旦切り離さないと、次の段階には入りにくいと思います。その他、新しい仕事や働き方の枠組みを創造することや、経験を地域や市民活動で活かすことなどを考えています。 これらの活動を通して、人と社会の活性化に繋げ、福岡から優れたビジネスモデルを発信することで、全国各地でそのモデルが模倣され導入されれば、これから先の不安が、これからの楽しみに変えられると信じています。「やりがいのある仕事、充実した日々、生きがいのある人生」が実現できた時に、日本の幸福度も、少しずつ上がっていくのではないかと期待しています。 QTnetモーニングビジネススクールも、今日のこの放送をもって終わりになります。九州大学ビジネススクールが設立されたのは、今から20年前の2003年4月でした。そしてこの番組モーニングビジネススクールは、2006年5月29日に、私が担当して「ビジネス・スクールとは何か」をお話しさせていただいたのが、最初の放送だったようです。今まで国際経営と国際ロジスティクスに関して、17年間で300以上のお話をさせていただきました。  番組を始めた頃は、九州で初めてのビジネススクールとして、まだまだ認知度があるとは言えない時期でしたので、みなさんにその存在を知っていただく上でも大変に有効でした。そして、何よりも国内のビジネススクールとしては、唯一教員がメディアを通じて、自分の研究を説明させていただいていたことになります。 この放送にあたっては、本当に多くの方々にお世話になりました。17年間スポンサーとして、このような貴重な機会をいただいたQTnetのみなさん、常に支えていただいたエフエム福岡の方々や、リスナーのみなさんに、心から感謝いたします。 今日のまとめ:人生100年時代にあって、シニアの能力活用によって、労働人口の減少や社会課題解決に繋げて、社会の活性化を目指すこと。

大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

<計画よりもまず行動>  新規事業を立ち上げる際には、事業計画(書類)を作成しなければならない。ただ、事業が革新的であればあるほど、過去の成功経験が通用しなかったり、必要な情報が手に入らないことも多い。わからないことだらけなのだ。こんな状況で、単に「一見理路整然と、それっぽく書き上げた」書類にはほとんど意味はない。  従って、アイデアを思いついたら、小さくても良いから素早く実行してみて、そこで得られた結果から更に良い方向に進める方法を考えて試す、という試行錯誤のサイクルを速くことにこそ価値がある。  PDCAループは、PではなくDからスタートし、その結果をCheckしてPlanにフィードバックするActionを大切にするループとして回すほうが重要だ。 <自分独自のものの見方や考えを持つ>  なにかの解決策を導き出すときに、物事を論理立てて考える「ロジカル思考(ロジカル・シンキング)」や、ユーザーの隠れた問題を観察して発見し解決する「デザイン思考(デザイン・シンキング)」が知られている。これはこれで重要だが、それらの手法を駆使してもなお答えが見つからないことも多い。結局、答えは「自分の中」にしかなかったりする。  これからの世の中は、ますます多種多様な情報や製品で溢れかえり、単純な正解がない世界が広がっている。だからこそ、自分なりの「ものの見方・考え」を持つ訓練がとても大切になる。近年は、アーチストが持っているユニークなものの見方をヒントに自由に思考する「アート思考」も注目されている。  自分独自のものの見方や考えを持って山を登って初めて、他に誰もいない頂上から自分だけの新しい景色が見える。 <ネガティブ・ケイパビリティを発揮する>  人間は、様々な社会の状況や自然現象、自分の苦悩の理由を分かろうとする「ポジティブ・ケイパビリティ」と、どうにも答えの出ない、対処しようもない事態に耐える「ネガティブ・ケイパビリティ」の両方を持つ。近年はSNSで瞬時に他人の考えや活動を知ることが出来るので、「ポジティブ・ケイパビリティ」に依存してしまい、拙速で安易な答えに飛びついて満足してしまったり、マニュアル思考に陥ってしまったりする。これは問題の本質に辿り着かず、解決した気になるだけなので問題だ。  従って、ネガティブ・ケイパビリティを発揮して、答えが出ない状況に耐える力を持たねばならない。そのためには、好奇心を持ち続けること、怒りや悲しみといった持続性のある感情を大切にすること、少数派であることを厭わないこと、などが重要となる。  忙しい毎日に押し流されず、簡単に答えが出ない状況に耐える力を持ち、時間をかけて粘り強く自分の問題意識に向き合うことに敢えて時間を割いてみてはどうだろうか。

大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

今日は最初にグローカルという話をします。Think Global、Act Localという言葉です。放っておくと自分の周りしか見ないで、世界の問題を解決しようという人が出てきてしまい、それは良くないです。Think Globalというのは、世界で起こっていることをそれなりに把握しないと、自分だけではなくて自分の会社の従業員やその家族も困ったことになります。世の中で何が起こるか把握しておかないといけません。それをThink Globalと言います。だからといって世界の問題を自分で解決できるわけがない。Act Localというのは、自分はどうしよう、自分の会社をどうしようと、自分が出来るところでなんとかするということです。ということで、最初にThink Global、Act Localでいかないといけないという話をしてから今日のテーマに移ります。 まず一つ目が米中対立の話です。ソ連が崩壊して以降、アメリカが唯一の超大国でした。30数年で中国がどんどん大きくなって購買力平価でアメリカを超えました。そういう意味ではアメリカと中国が二大超大国の時代に入っています。日本はどうするべきかですが、日本は自由民主主義で、どちらかというと中国よりもアメリカの核の傘の下に入っているということもあり、アメリカの味方をするということですが、中国があまりに大きくなってしまったので、日本企業が中国を撤退することは無理です。工場だけでなくて顧客のいる市場になってしまったからです。そういう意味では中国と戦争する、中国から撤退するというのは無理です。 アメリカはデ・カップリングと言っていました。デ・カップリングというのはアメリカのサプライチェーンと中国のサプライチェーンを分離して、中国に関わらないでアメリカとその友人たちのサプライチェーンだけでやっていこうということです。それは日本企業からしてみれば中国から撤退して、アメリカを中心とするサプライチェーンのみに参加してくれという話です。ところが、日本企業は少し嫌で、EUのヨーロッパ企業も嫌で、アメリカの多国籍企業も嫌でした。アメリカに対してなかなか面と向かって嫌だと言いにくかったので、この間EUがデ・カップリングではなくて、デ・リスキリングでしょうと言ってくれたので、日本はラッキーと内心思っていました。デ・リスキングというのは、リスクをできるだけ回避しましょうという意味です。サプライチェーンを分離するというのはもう無理だということを正面から認めて、出来るだけリスクを回避するということで頑張りましょうという話になっています。 次に、AIや生成AIの話です。今、ホワイトカラーがやる仕事が段々減ってきて、生成AIで更に仕事をとられてしまうのが加速するということが起こりつつあります。今まで日本の企業では個人主義というのはあまりありませんでした。共同体で稟議制で意思決定しましょうというものでした。誰かが稟議を書いて皆で意思決定をするということで、実行するのは他の国と比べてもすごく信頼がおけるといういいところはありますが、なんだか遅い、誰が決めて責任をとらないといけないのかわからないという面もあります。生成AIでかなりの人がこれから仕事を失うということがおき始めていて、そうすると人間が仕事をし続けるためにはどうしたらいいかと、AIに負けないような付加価値を提供できる専門家にならないといけないという状況になっています。ところが今まで日本企業は3年ローテーションで何でもできる人にしましょう、銀行でいうとまず支店長を目指しましょうということをやっていました。ところが、AIに出来ないような付加価値を提供する専門家は3年では出来ません。そうすると、複線化人事と言って、今までみたいなジェネラル・マネージャー、なんでもできる人をゆっくり育てるというような話だけではなくて、AIが出来ないような付加価値を提供できる専門家を長い時間をかけて育てるというような時代にならないといけないという話になっています。 私が40年ほど前にアメリカのメロン銀行というピッツバーグの銀行で働いていた頃、人事部でなくて本人がキャリアを企画する制度は既にありました。3か月毎にオープニングジョブリストが回ってきて、もしやりたいことがあったら3年今の自分のところでやっていれば手を挙げて下さい、もし我々の方で欲しいということになれば認めますと。要するに人事じゃなくて、本人がキャリアプランを作ってそれを実行していくというのがアメリカやイギリスのキャリアプランです。ところが日本というのは、職業選択の自由、どこの会社に入ろうかというところは自由ですが、入った後のキャリアは人事が思うように決めていくため、本人がこれをやりたいと決めていくということは起こらないわけです。しかし、生成AIが導入されて付加価値を提供できる専門家を作らないといけないという話において、誰が作るのかというと人事部が本人のやりたくないことを長期間強制して専門家にするのは無理で本人が希望してならなければなりません。そういう意味では、終身雇用で一つの企業で皆がジェネラル・マネージャーをめざすのではなくて、たくさん転職してもずっと同じことをやり続けて何かの専門家になる、AIの提供できない付加価値を提供できるというよう専門家も認める人事制度がこれからは求められていくということになると思います。 日本国憲法第13条は憲法の中の最高規範と言われていますが、個人を尊重して、個人が自由に幸福を追求することが出来る。公共の福祉が妨げられない限り、個人は自由に幸福を追求していいと書かれています。ところが憲法で書いただけで実際はそうなっていません。日本は共同体主義で、個人の自由は非難されてきました。今世の中変わろうとしています。自分の幸せは、自分で追及しなければなりません。自分でどのように自分の幸福が変動してきたか、自分の価値体系はどのように出来ているかということを把握したうえで、自分のキャリアプランを自分で作っていくということが求められています。

大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

 今回は、「大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか」というトークテーマをいただいています。このテーマについて専門分野の視点からお話しすることになっている訳ですが、正直に申し上げると、非常にテーマが大きいために、何をお話ししたものか考えあぐねていました。しかし、ともかく、このテーマに表れている問いに対する私自身の違和感から話し始めてみようと思います。  まず「私たちは大きな転換期を迎えている」という認識は、今に始まったものではなく、おそらく歴史上のどの時点でも、その時代を生きた人々に持たれていたのではないかということです。どの時代にも、その時代なりの困難というものがあり、その困難さを強く意識する人々によって、今こそこれまでの生き方、働き方を変えなければならない「転換期」を迎えているのだと認識されてきたのではないかと思います。それぞれの時代の困難には、他の時代状況とは異なる固有性が認められるでしょうが、一方では、その質において互いに類似した性質を持つ時代を見出すこともできる筈です。そう考えると、自分たちの直面している困難の重大さを特権化して、今こそが大きな転換期であるとする意識は薄れてくるのではないでしょうか。  私が、こういうトークテーマに水を差すようなことを言うのは、現状の困難さを誇大に宣伝して危機感を煽るようなことは、学者が最も慎むべき行為だと思っているからです。無論、自然現象であれ社会現象であれ、学者は自らの研究対象に何らかの重大な変化の兆候を発見することがあれば、それをいち早く社会の構成メンバーに伝えて、必要な行動を促すべきです。しかし、それが重要な義務であればこそ、さしたる根拠もなく徒に社会的な注目を集めるような言辞を弄んではならないと思うのです。そうでなければ、学者が本当に重大な危機の兆候に気づいた時に警鐘を鳴らしても、社会に信用してもらえなくなるでしょう。  例えば、近年の状況を、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとって「VUCAの時代」と呼ぶ人たちがいます。VUCAという語は1990年代に米国で生まれた軍事用語として知られていますが、それが近年ではビジネスを取り巻く予測困難な状況を表す言葉として使われている訳です。実際、このような言葉は、新型コロナウィルス、激甚災害の多発、ロシアのウクライナ侵攻といった予測困難な要因が経営環境を変動させてきた状況を経験した企業にとって受け入れ易いのかも知れません。しかし、こうした環境変化を「VUCAの時代」などと呼んでみたところで、困難の本質が見えてくるわけでもありませんし、せいぜい情報収集能力を高め、迅速な意思決定を行うことがこれまで以上に重要だという程度の凡庸な結論が導き出されるだけでしょう。  ただ、実際に現在、自らの関わっている企業経営が何らかの事情で転換期を迎えていると認識されている経営者やビジネスパーソンはおられる訳です。そうした認識をお持ちの方々のご参考に供するためは、今日の日本企業が直面している一般的な経営課題とその解決策についてお話しすると良いのかも知れませんが、既に私は最近の放送の中で、日本的経営を再検討する視点から、その点については論じたことがあります。そこで、今回は私がお話しする最後の機会でもありますから、いま切実な苦境に立たされている経営者やビジネスパーソンを想定して、一般的な経営課題ではなく、目の前の苦境を乗り越えていただくために、私が最低限申し上げられることを申し上げてみたいと思います。  まず、先にも述べたように、どれほど困難な経営環境に思われても、大抵の状況は長い歴史の中で見れば、既に私たちの社会が少なくとも一度は経験しているものだと言うことです。従って、かつて同じような困難に直面した人々が、その状況とどのように対決し、どのような教訓を残したのかを振り返ることによって、今日の困難を乗り越えるための手掛かりが得られる筈です。経営学を含む社会科学という学問は経験科学ですから、そのような手掛かりを、経験的なデータに基づいて提示することはできる筈だということです。  また、どれほど困難に思われる状況でも、それを歴史的な時間の中において見れば、必ず終わりが見えるということ、終わりのない夜はないということです。長く続いた新型コロナウィルスのパンデミックにも、私たちは漸く出口を見出しました。この経験を忘れずにいることは、現在の苦境を乗り越え、将来に向かって生き抜く上で重要かと思います。ともかくも生きて、皆さんの経験を将来に繋いでくださいと、申し上げたいのです。  そして、少し時間的に余裕があれば、皆さんの苦境を歴史的な時間の中で相対化し、その経験を科学するための方法を学ぶために、大学という場にいらしてみてください。そこで私が皆さんにお会いすることがあれば、「VUCAの時代」などという聞いた風なことは決して言いません。ただ、もう還暦を過ぎた年寄りですから、「心配なさるな。お前様、それはな、実は昔もあったことなのじゃよ」という言葉遣いで、話を始められるようにしたいと思います。

大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

今日は私が考える「私たちは、これからの未来をどう生き抜くか。」についてお話ししてみたいと思います。私のキーワードは、「自分らしさ」です。 リスナーの皆さんの「自分らしさ」って、何でしょうか?すぐに答えが出る方もいらっしゃると思いますが、「ちょっと待てよ。そんなこと急に言われても」と戸惑う方も少なくないのではないかと思います。この質問を企業に勤めるビジネスパーソンにお聞きすると、実は口ごもる人が少なくありません。なぜでしょうか。 実は、会社組織では「自分らしさ」を発揮することが求められていないからです。「自分らしさ」を発揮するのではなく、例えばマニュアルや規則に書いてあることをしっかり守ることが求められます。会社の期待通りに行動することが求められるわけです。その結果、職場では、「自分らしさ」を考えることや、ましてや「自分らしさ」を発揮する機会は本当に少なくなってしまいます。この意味で、組織というのは大変怖い側面を持っています。「朱に交われば赤くなる」というわけです。 皆さんが何か新しい企画を考える機会があったとしましょう。新しい企画なので、自由な発想で自分らしい企画を考えてよいかというと、必ずしもそうではありません。上司や周りの同僚が納得するような案を考えることが求められるからです。社内から異論・反論が起きないような答え、言ってみれば無難で、誰もが「確かにそうだよな」という企画案こそが、「良い」企画案とされてきました。そうした案を早く作ることができる人間が「できるヤツ」と言われてきました。そうした「良い案」を作らなければならないので、「自分らしさ」を考える暇などあるわけがありません。つまり会社には、「自分らしさ」を忘れさせる力が動いているといってもよいと思います。多くのビジネスパーソンが口ごもるのは、このようなわけがあるからです。 さて、今日なぜこの話をしているかというと、これからの時代は、これまでとは大きく状況が変わって、「自分らしさ」がとても大切になると思っているからです。 最近、新しいAIである、ChatGPTが大変話題になっています。皆さんの中にも使ったことがある方もいらっしゃると思います。ChatGPTは世界中の情報を集めて、論理的に分析した結果をわかりやすい日本語でアウトプットしてくれます。ChatGPTの強みを一言でいうと、誰もが納得する答えを出す力と言ってもよいと思います。そして、これからの時代は、誰もがこうしたAIの力を自由に使えるようになります。そうすると、これまで会社で求められてきた誰もが納得する企画案は、AIが作ってくれるようになるのです。  では、一体人間は何をすればよいのでしょうか。これを考えるためには、AIにはできないことを考えることが一番です。AIにはできないこととは何でしょうか?AIはなんでもできてしまいそうですが、実はAIは企画を作ったり、回答を出すことはできますが、それを実行したり、実現することはできません。   例えば、これからの外食産業を勝ち抜いていくためには、こういったカフェがよいだろう、という答えをAIは出すことはできますが、カフェを実際に作り上げていくのは誰でしょうか?それは人間です。そして、カフェを創るためには、多くの人がかかわってきます。デザイナーもいれば、食材の専門家もいる、スタッフの募集をしたりお金の計算をする人も必要です。みんな仕事の進め方も、ひょっとすると考え方自体も異なるかもしれません。そういった多様な人たちをまとめて、一つのカフェを創っていく。それは、実は簡単なことではないのです。 それではいったい何が必要なのでしょうか?それはリーダーシップです。考え方も、そして、ひょっとすると生き方も異なる人たちと一緒に、目指すものを作り上げていく力、これがリーダーシップです。具体的には何を目指していくのか、そしてそれは何故なのかを語っていくこと、この場合だと、どんなカフェを創りたいのか、そしてそれはなぜなのかを自分の言葉で語りかけ、多くの人たちのやる気のスイッチを押していくことが必要です。言葉をかえると共感を生み出す力と言ってもよいと思います。「そうか、この人がそういうのであれば、一肌脱いで頑張ってみるか。」を思わせることがとても重要になるのです。  よくリーダーシップというと、古くはキング牧師、最近ではスティーブ・ジョブスやイーロン・マスクのようなカリスマ性があって、かっこよくてパフォーマンスが上手な人を思い浮かべてしまうのですが、実はこうした人たちだけがリーダーシップの見本ではありません。例えば、インドを率いたガンジーや多くの弱き人たちを救ったマザーテレサなども素晴らしいリーダーです。雄弁でも何でもない、派手なパフォーマンスとは無縁の人です。彼・彼女がしたことは、自分が何を目指すのか、それはなぜなのか、そして自分はどんなことを大切にしていきたいのかを自分の言葉で多くの人に語り掛けたことです。それは、彼・彼女の「自分らしさ」そのもの、「自分らしさ」の本質といってもよいと思います。自分がどんなことを大切にし、自分が心から成し遂げたいと思うことは何か、それを自分の言葉で語ることを通じて、何千・何万という人の心に共感を生み出していったのです。 リーダーシップとは、「自分らしさ」を発揮することです。これは、AIにはできません。AIが作った文章を読んだことがある方はお気づきのとおり、AIの文章には感動がないのです。心が動かないのです。共感しないのです。これからの時代、我々人間にしかできないこと、すなわち多くの人に共感を生み出すために、是非「自分らしさ」を大事にして欲しいと思います。 今日のまとめ: これからの未来を生き抜いていくために大切なこと。それは、「自分らしさ」です。皆さんの「自分らしさ」を、今一度見つめなおす機会になれば嬉しいです。

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